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ノートル・ダムの椅子

更新日:2021年6月28日





ノートル・ダムの椅子


 パリのノートル・ダムも、生者と死者の十字路という空間であることは間違いありませんが、それでも天上の世界を描こうとして建築されています。


 炎上してまるで地獄谷のような煙を吐いているのを見ると、心に迫ってくる思いがあります。


 私の歌集『ノートル・ダムの椅子』から、最初の一連を引用します。





 この留学より〈われ〉が始まる 原点をノートル・ダムのかたき椅子とす


 ノートル・ダムは聖母のからだその胎(はら)の闇に木椅子を軋ませてゐる


 晩秋の雨の尾曳きてほのひかる地下鉄(メトロ)近づく われに逢ふため


 プルースト好きの日本人(ジャポネ)がまたひとりと苦笑し教授が肩をたたきぬ


 茶席のごとく身幅だけ黒いドアあけてソルボンヌ大学の教室に入る


 シャンゼリゼまた渋滞すあゆむほど耳鳴りふかきけふは安吾忌


 組み討ちて安吾の抛(な)げしシェパードがジャポネのわれを見すゑ走り来


 ごちやごちやの寮のわが部屋ああ、されど部屋ありて黄なる電球ともる





 炎上するノートルダムの報道写真から一枚をお借りし、暗くしたりトリミング等の加工をして、使用しています。










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