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ダルメシアンの壺


                   日置俊次歌集『ダルメシアンの壺』より   


青山の墓の直哉のさびしさに靠(もた)れさす馬酔木のほのじろき房

心こめて直哉を語る教室に立ち見の学生まだ湧きやまず

その仔犬もらひ手をらずわが家へとたどりつきたり 右眼が青い

ダルメシアンの片眼青きは「失格」と定めたりいつかたれか知らねど

あさがほの露の青さの眼をひらき犬は寝足りぬわれの口舐む

ダルメシアンが座すとき黒きぶちの散る白壺となる首かたむけて

姫のごと名付けし仔犬「ダルメシア」知らずいつしか「ルメ」と呼びをり

淡く笑むルメはくちびるまでまだらこの壺に詰めむわれのまごころ

まだらごとルメは大きくなりたれどルメのままなり瑠璃いろの眼は

たましひで語る教壇さむざむと底無し沼のまんなかにゐる

つひに起つことのかなはぬわれの頰ルメが舐めをり青き顔して

「なんと云つても、もう祖母だけだ」と書く直哉われもひそかにルメだけと思(も)ふ

わが体には壺がひしめく眼と臍(へそ)を除きて打つと鍼師は断ず




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