『ノートル・ダムの椅子』 2021.8.4
- shunjihioki

- 2021年8月4日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年8月13日
『ノートル・ダムの椅子』
現代歌人協会から問い合わせがあり、ホームページに資料として載せるので、歌集『ノートル・ダムの椅子』についての情報が欲しいというお話でした。
第50回現代歌人協会賞を受賞した歌集なので、何かの記録として載せるらしいです。
それで本の写真を撮ってメールで送りました。
ついでなので、このブログにも歌集のことを載せておこうと思いました。今までここでも何度か触れてきていますが、第一歌集はやはり印象が深いです。いちおう、代表歌を20首あげておきます。
日置俊次『ノートル・ダムの椅子』角川書店 平成17年9月25日刊
この留学より〈われ〉が始まる 原点をノートル・ダムのかたき椅子とす
ノートル・ダムは聖母のからだその胎(はら)の闇に木椅子を軋ませてゐる
破傷風の接種を受けしよりパリの路地には馬のにほひ満ちたり
「日本館」とふパリの学寮に伝はりし雪平鍋をかぷかぷ洗ふ
「非常識(アンサンセ)」「毒(ポワゾン)」「エゴイスト」調教をしきれぬ魔ものの香るフランス
スーパーのレジにて配る鈴蘭(ミュゲ)一輪 ひとりわが黄なる肌にはくれず
どの神でもいいとつぶやく 薔薇窓へくねりつつのぼる鬱の塵埃
木の椅子に結跏趺坐せし半日を背にして去らう ミサが始まる
乾きかけしバゲットちぎり鴨にまくいつしか噛みてをりたりわれも
鬼蜻蜒(オニヤンマ)いつでも空(くう)に静止するあのみなそこに鏡あるはず
ひらくまで八年かかつたかたくりの澄みきるほのほ何もいはない
みのもにあるものみのもになきもの顔だしてまたしづむものおちてゆくもの
一矢もむくひずをはると見えしイラクよりひそかに散りてゆく火の卵
日に百人自殺する国 春の日をくだき鉄橋轟(な)りつづけたり
宮益坂上の古書店ぼろぼろのシャガールと出でて晩夏光浴ぶ
きちきちばつたが齧る黄菊のあかるくて生前どほり庭めぐる父
剥落の月のかけらを踏むごとくぎんなんを踏む 父の亡き街
脚二本もげて動けぬ蟷螂のふかき疲れを薔薇にのせし児
クレヨンの散るテーブルにあをあをと未完の海が熟睡(うまい)してをり
ノートル・ダムの椅子に座りてわれだけを見てゐたおまへ 小さきまなこよ






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