雨季
- shunjihioki

- 2021年7月12日
- 読了時間: 2分
雨季
歌集『愛の挨拶』より
つぐなへぬ蒼きガラスの散乱を踏みしめて哭(な)くわれの雨季来る
ガラスほど冷ゆる玉ねぎスライスを押し込むくらくら火照るのみどへ
わがうちをうねる潮(うしほ)にうす日さし夜は明けるたれか溺れゆくまま
溶けかけし玉ねぎ捨てむ中年の身にくづれやまぬ闇の臭ひの
小さき傘はみだす肩をこの身よりけづり落とせず仰ぐ合歓の木
闇よ闇汝(な)の湿りたる香に惹かれ映画館傘のしづくと入りぬ
ガラス屋のチャップリン来る礫(いし)投げて小窓を砕く天使をつれて
ひとのなみだ弾きてはさらに罅はしる蜘蛛の巣もやうの角窓われは
めぐすりの木はかたすぎて砕きえずしびれたり雨季のひとみの奥が
これは私の歌集『愛の挨拶』の巻頭を飾る「雨季」という一連です。
あいかわらず水の歌が多いです。
ちょっと目次を一瞥しても、アクエリアス、難産の水、湯舟、濁流、春の多摩川など、水の歌ばかりですね。
しかし梅雨の時期には、たくさんの歌ができます。
いまあちこちで、大雨の被害が出ており、多くの人の安否も気遣われます。
昨日は私の家の地域もものすごい雨で、雷が長く続き、雹も降りました。
梅雨の季節に感じる危機感のようなものは、歳月がたってもいつも変わらず、それが歌になっていくようです。
めぐすりの木というのは、削って飲むと目にいいと言われる木の枝で、どこかで買ってきたのですが、硬くて削れず、一度も飲めなかった木です。
大きな鑢(やすり)のようなもので削ればいいのかもしれませんが、そういう道具が家になく、けずりようがなかったのです。
目というものは、いつも雨期であるように感じています。
写真はWIXの素材です。





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