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更新日:2021年7月7日







   エメラルドの夜



 たくさんのひとたちが

 私の歌集をふみつけながら

 笑いつつ通り過ぎた

 きっとこよなく幸せだったのだろう

 そんな人たちには

 私の悲しみはとても届かない

 中には本の上に立ち止まって

 泥足で踏みにじりながら

 ひどい罵倒をあびせかけたものもいた

 そこには

 まるで見当違いの嫉妬が

 ちろちろと混じっていた

 なぜ悲しみに嫉妬するのか

 悲しみとは何なのか

 痛みとは何なのか

 自身の知らないものに嫉妬する

 知らないものは怖いからだ

 ああ

 そこにはどんな暗い

 歓びが生まれるのだろう

 何度も同じ情景を

 目の当たりにして私は

 それでも歌を詠みつづけた

 おそらくだれよりも

 自分の中にある

 悲しみや痛みが怖いからだ

 恐れを焼き尽くすために

 燃える翼をもつ言葉をさがし

 歌集の上に歌集を重ね

 そして最後に

 長い時間をかけて

 小説を書き

 それを積み上げた歌集の上に重ねた

 それは檸檬色(れもんいろ)の爆弾ではなく

 もっと青い青い苦しみの塔だ

 ピカソの青の時代のような

 あんな野放図な若さは

 もう失われていたが

 それでも湯気をあげて

 たぎりつづける湖のような

 静謐な痛みの波が

 そこにゆっくりと渦を作った

 そしてそこから

 エメラルドの色の不思議な夜が

 すきとおった帳(とばり)をひらきはじめた






   動画はWIX素材です。



 
 
 

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©2021 SHUNJI HIOKI 
『エメラルドの夜』Wix.com で作成されました。

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