詩
- shunjihioki

- 2021年7月5日
- 読了時間: 1分
更新日:2021年7月7日
詩
エメラルドの夜
たくさんのひとたちが
私の歌集をふみつけながら
笑いつつ通り過ぎた
きっとこよなく幸せだったのだろう
そんな人たちには
私の悲しみはとても届かない
中には本の上に立ち止まって
泥足で踏みにじりながら
ひどい罵倒をあびせかけたものもいた
そこには
まるで見当違いの嫉妬が
ちろちろと混じっていた
なぜ悲しみに嫉妬するのか
悲しみとは何なのか
痛みとは何なのか
自身の知らないものに嫉妬する
知らないものは怖いからだ
ああ
そこにはどんな暗い
歓びが生まれるのだろう
何度も同じ情景を
目の当たりにして私は
それでも歌を詠みつづけた
おそらくだれよりも
自分の中にある
悲しみや痛みが怖いからだ
恐れを焼き尽くすために
燃える翼をもつ言葉をさがし
歌集の上に歌集を重ね
そして最後に
長い時間をかけて
小説を書き
それを積み上げた歌集の上に重ねた
それは檸檬色(れもんいろ)の爆弾ではなく
もっと青い青い苦しみの塔だ
ピカソの青の時代のような
あんな野放図な若さは
もう失われていたが
それでも湯気をあげて
たぎりつづける湖のような
静謐な痛みの波が
そこにゆっくりと渦を作った
そしてそこから
エメラルドの色の不思議な夜が
すきとおった帳(とばり)をひらきはじめた
動画はWIX素材です。





コメント